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「おみせ」 五十嵐豊子 1980年 福音館書店
日本各地でスケッチされた、懐かしい「おみせ」がいっぱいの絵本。
駄菓子屋、荒物屋、魚屋、おもちゃ屋、洋品店、果物屋・・・
木造で、瓦屋根で、ビニールの日除けがあって、
店先には赤い公衆電話と10円のガチャガチャがあって、
煙草売りのお婆さんがいて、野球帽をかぶった子どもがいて、
唐草模様の風呂敷包みを担いだ商売人がいて、
乳母車を押すお母さんがいて、自転車に乗った牛乳配達人がいて、
下駄を履いたおじさんがいて、割烹着を着たおばさんがいて、
そうそう、なぜか家の中に車がしまってあるけど、そういう家が、近所にもあった。
1980年なんて、そんな昔じゃないように思うけど、もう31年も前のことなんだ。
31年前、この細い路地にも、たくさんの「おみせ」があったっけ。
ここは靴屋が2軒、隣同士にあったところ。
ここは帽子屋さん、それから旅館、そうだ麺のお店も2軒あった。
そうそう、この通りには魚屋さんが確か3軒あって、
私は高校生の頃、生の魚のにおいが苦手で、
いつも自転車で魚屋の前を通る時は、息を止めて全力で走ったっけ。
ここは団子とお稲荷とのり巻の店だった。友達が小さい頃、
母親と妹と一緒にこの店で食事をして、さて支払いの時になったら
お母さんが財布を忘れていて、家にお金を取りに帰るのに、
友達一人が人質として店に残されて大泣きしたっていう思い出の店。
ここは何の店だったかな。思い出せないや。
今でも建物は残っているけど、「おみせ」をやっているところはほとんどない。
この絵本に載っている「おみせ」の中で、今でもやっている「おみせ」は、いくつあるのかな。
あの頃できた市街地の新しいショッピングセンターは老朽化し、
近頃できた郊外の大型ショッピングセンターにお客を取られてなくなった。
あと数十年すぎたとき、街はどんな顔をしているだろう。