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黒グルミのからのなかに

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                         「黒グルミのからのなかに」
          文 ミュリエル・マンゴー  絵 カルメン・セゴヴィア  訳 ときありえ
                          2007年 西村書店 


昔、人の寿命を蝋燭の火にたとえた話を聞いたことがあった。
「まんが日本昔ばなし」だったような気もするし、そうではなかったような気もする。
すべての人には、それぞれに寿命の蝋燭があって、
その人の蝋燭の火が消えるとき、その人の命が終わる。

西洋では、よく死神が登場するけれど、
この物語は、スコットランドの民話をもとに書かれた話。

母と二人きりで暮らしていた少年が、ある日、母に告げられた。
自分はもうすぐ死ぬと。死神が自分を連れに来るのだと。

少年は外で、黒いマントに身を包んだ老婆に出会った。
死神が、母の命をひきとりに来たのだ。

少年は死神にとびかかり、鎌を奪い取り、死神をたたきつけた。
たたくたびに死神は小さくなり、最後は少年のげんこつの中に握られるほどの大きさになった。
少年はそれを、足元にあった大きな黒グルミの殻の中に押し込んで、小枝をさしてふたをした。
そしてその黒グルミを、海に向かって放り投げた。
それで少年の母は、死なないことになった。

しかし死なないことになったのは、少年の母だけではなかった。

オムレツを作ろうと卵を割ろうとしたが、卵は決して割れなかった。
それでは野菜スープを作ろうと、畑で野菜を抜こうとしたが、
じゃがいもも、ねぎも、にんじんも、かぶも、どうやっても抜けなかった。
魚を買いに行ったら、漁師たちは、今日は一匹の魚もあがらなかったという。
肉屋は肉屋で、子ウシを殺そうとしたが、うまくいかなかった。
農夫は麦の刈り入れができなくなってしまった。

世の中のすべてのものが、死ななくなった。少年のせいだった。

少年は自分が死神を黒グルミの中に閉じ込めたことを母に話した。
母は、生きているものがもつ、ただひとつの掟を少年に教えた。
すべての命には、終りがある。死神を探し出して、すべてを自然の流れに戻すのだと。

少年は母の言葉に従って、死神をみつけに行った。
カモメに尋ね、カニに聞いて、やっと黒グルミをみつけた。
死神を黒グルミの殻から出して、鎌を死神に返した。
これで命は、自然の流れに戻るようになる。
ただし死神は、少年に自由にしてもらったお返しをすることにした。



昨年、友が突然死した。
蝋燭の火が消えたのか、死神に連れて行かれたのか。今も受け入れられずにいる。
終わらない命がないことは、とっくに知っている。
知っているけど、わかることは難しい。
命が終わるのは、早いか遅いか、時間の問題だけなんだけど。
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by haruno-urarano | 2013-03-21 18:54 | 翻訳絵本