今日の絵本はこちら。
瀬川康男・絵 / 松谷みよ子・文 2002年 フレーベル館
瀬川康男さんと松谷みよ子さんの名コンビによる「日本むかし話」シリーズです。
「三枚のおふだ」と言った方が、親しみがあるように思います。
そう、あのお話・・・。
山寺の小僧さんが、山奥で知り合ったお婆さんの家に遊びに行きます。
和尚さんが「やまんばにちがいね、行くな」と言うのも聞かずに。
優しかったお婆さんは、夜中になると恐ろしいやまんばに・・・。
裏表紙のやまんばの姿。
元祖「口裂け女」ですね。こんなのに追いかけられたらコワイですよ~!
助かるのはわかっているのに
小僧さんが捕まりやしないか、ハラハラ。
小僧さんの危機というのに、「まてまて」と
なかなか門を開けてくれない和尚さんに、ヒヤヒヤ。
和尚さんののんびりした挑発に乗って、やまんばは・・・。
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日本のむかしばなしには、度々やまんばが登場しますよね。
おっかなくって、おっそろしくって。だけど
やまんばの出てくる話は 大好きでした。
特に好きだったのが、この「三枚のおふだ」、特別な思い出があるからです。
むかしむかし、子供の本にはよく、ソノシートのレコードが付録についていました。
「ケロヨン音頭」とか、「うめぼし殿下」の歌は、きっと幼稚園レベルでしょうね。
小学生ともなれば、「おはなしソノシート」です。
まだテレビの「まんが日本昔ばなし」もなかった頃。レコードも高価だった頃。
ペラペラのソノシートから聞こえてくる軽快な音楽と語りに、
日本の高度成長期の庶民のお子様は、どれだけワクワクしたでしょう。
中でも「三枚のおふだ」は大傑作でした。
故・宇野重吉さんの大ファンだった子供は、きっと私だけじゃなかったはず。
おふだが便所の中からやまんばに叫ぶ
「まだ出るウンコ ダイヅチコラショ」
というセリフがおかしくて、おかしくて。この部分ばかり聞いていました。
大好きな話だったので、紙芝居をつくり、
祖父母や叔父叔母の前で披露したことがありました。
当時20代前半だった一番若い叔父が大喜びしてくれ、
いつまでもいつまでも、30年以上経った今でも、
時々「まだ出るウンコ」の話をするのです。
つまり・・・
これが、昔ばなしや物がたりや絵本の、真の役割なのでしょう。
たくさんの、温かい記憶をつくること。
話の中身は忘れても、古い思い出は、いつまでも残ります。
寝かせるほどに、深くまろやかに・・・。