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ひとつだけの贈りもの

今日のお話はこちら。

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            「きん色の窓とピーター」 藤城清治・影絵/香山多佳子・お話し
                      昭和59年 暮らしの手帖社

            より、「ひとつだけの贈りもの」


時々どうしても読みたくなるおはなしのひとつ。
特に疲れている時、何もかもが嫌になった時、そんな時、こんな時、読んでみる。

夫を亡くした若い母親は、生まれたばかりの息子、アウグスッスの名付け親の老人に、
「子どものために、ひとつだけ贈りものをしようと」言われた。
今夜、老人の部屋からオルゴールの音が聞こえてきたら、
子どもの耳元で、ひとつだけ願いを唱えなさい、そうすればそれは叶えられると。

たったひとつだけ・・・
大金持ちになること? 世界一美しくなること? だれよりも利口になること?
・・・母親はあれこれ考え疲れ、うとうと居眠りしてしまった。

オルゴールの優しい音に、はっとして目を覚ました。
うろたえているうちに、音は徐々に消え始めてゆく・・・

「坊や、みんながお前を愛さずにはいられないように。
だれからも愛される子になるように・・・」

母親は祈るような思いでささやいた。

・・・・願いは叶い、
利口で美しいアウグスッスは、だれからも愛される少年となった。

だが・・・

アウグスッスは愛されるだけで、愛することを知らない、傲慢な人間へと育っていった。

愛されても愛されても、楽しささも喜びも感じることのできないアウグスッスの心は、
やがて虚しさでいっぱいになった。何のために生きるのか、わからないのだ。

そんなアウグスッスの選んだ道は、毒薬を飲むことだった・・・・。

ぶどう酒の中に毒を入れ、さあ飲もうとしたときだ。

名付け親の老人が、アウグスッスの前に現れた。

母親の願いはアウグスッスのためにしたものだったが、それは母の願いであった。
母の願いは叶ったが、アウグスッスのためにはならなかった。

「もう一度、自分で願うとしたら、何を望むかい?
もう一度だけ、その願いを叶えてあげよう」老人はそう言った。

「ああ、ぼくが人を愛することができるようにしてください!」
アウグスッスは泣き叫んだ

・・・その日から、アウグスッスの全てが変わった。

花は美しく、小鳥は愛らしく、子どもも年よりも、何もかもが愛おしい。
だれにでも親切にせずにはいられない。
どんなことにも驚きや喜びを感じる。
心があたたかく燃えているのが、自分で感じられた。

けれど、変わったのはアウグスッスだけではなかった。

もうだれひとりとして、彼を愛する者はいなくなった。
アウグスッスはだれからも相手にされず、乞食のように変わり果てた。

結末は・・・・

この絵本、
または原作であるヘッセの短編童話集『メルヒェン 』の中の「アウグスツス」をどうぞ。

「愛される」と「愛する」。
ふたつのうちのひとつしか叶わないとしたら・・・
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by haruno-urarano | 2008-02-07 23:20 | おはなし