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浦島太郎

今日の絵本はこちら

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「浦島太郎」
 中谷宇吉郎・文 / 藤城清治・影絵 / 松本政利・写真
 昭和26年 暮しの手帖社 発行
 平成15年 暮しの手帖社 復刻





「ほうら。おりこうさんは、もう寝る時間だよ。」
「いやだ、いやだ。 お父さんがお話してくれなくちゃ、寝ないんだもん。」
「仕様がないねえ。ではひとつ、お話しようか。さて、何のお話にしよう。」
「浦島さんがいい。ほら、ぶくぶく、ぶくぶく、ぶくぶく・・・・って。」
「よしよし。じゃあ、ぶくぶく、ぶくぶく・・・・にしようね。
 ほうら、お布団におはいり、いい子だね。」
「はーい。わあ~、お布団、あったかいねえ~。」

                 

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・・・・・そんな会話をしながら、子供たちを寝かしつけたのかなあ。
中谷宇吉郎博士だって、お家の中では普通のお父さん。
このお話は、中谷博士が子供たちを寝かしつける時に
よく話してきかせたものでした。
元の昔話のままだと短すぎるので、なるべく長くひっぱって、
だらだら、だらだらと、話を引きのばして聞かせたそうです。

どんなふうに、だらだらお話したのかな・・・


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むかしむかしあるところに、浦島太郎さんという人がいたんだって。
知ってるでしょう、浦島さんというのは、お魚をとる漁師なんだね。
漁師って、おうちは海の近くにあるんでしょう。
だから浦島さんのおうちも、海の近くにあったのね。
海のところには、白い砂浜があるでしょう。
砂浜って、平らな白い白い砂がずっとつづいてる砂浜なのね。
その白い砂の砂浜を、どんどん歩いて行くと・・・・・・



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・・・ほうら、
とっても気持ちがよくなってきたでしょう?
こんな優しい言葉でお話してもらえたら、
どんなに幸せな夢が見られるかなあ。



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自分で声に出して読んでいても、とっても気持ちがよくなって、
だんだん眠くなってくるんだよ。


ぶくぶく、ぶくぶく、ぶくぶく。
ぶくぶく、ぶくぶく、ぶくぶく。
・・・・・・・・・・・

おまじないじゃないよ。
浦島さんが亀の首につかまって、海にもぐっていくところだよ。
中谷博士のお子さんたちは、たいていこの
「ぶくぶく、ぶくぶく、ぶくぶく」
のあたりで八分通りは眠ってしまうのだって。
だからそのあとは、声を小さく小さくして、
いつまでも、いつまでも
「ぶくぶく、ぶくぶく、ぶくぶく、ぶくぶく、ぶくぶく、ぶくぶく・・・」
と言っていると、すっかり寝込んでくれるのだって。
そんな時はしめしめと、お話はそこでおしまい。
だけど、いつもそううまくいくとは限らないのね。突然、
「まだもぐるの?」
と、聞かれることがあるんだってさ。
そういう時には、仕方がないからお話の先を続けるのだってさ。



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この絵本が最初に出されたのは、
戦争が終わって、まだそんなに経っていないころのことでした。
藤代清治さんが「暮しの手帖」に影絵の連載を始めたのは昭和23年、
24歳の時でした。
当時はまだ、白黒写真だったのですね。

本のあとがきには、中谷さんと藤城さんと松本さんが、
影絵を撮影している貴重な写真が掲載されています。


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冷たーい雪の研究をした中谷博士ですが、
ぽっかぽかに温かいお父さんだったのですね。



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ぐう、ぐう、ぐう・・・


・・・おや?
みんな寝ちゃったの?

よしよし、いい夢見てね。
by haruno-urarano | 2009-05-22 22:33 | 日本の絵本