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カテゴリ:おはなし( 5 )

オズの虹の国

今日のお話はこちら


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                  「オズの虹の国」  ライマン・フランク・ボーム
                     訳 佐藤高子 / カバー・挿絵 新井苑子
                            1975年  早川書房

                 

「人生にとって大切なことは すべて子どもの本に書いてある」
    ・・・誰の言葉か忘れたが、そんな言葉を昔、読んだことがある。


「オズの魔法使い」のことは、たいていの人が知っていると思うけど、
「オズ」に全部で14冊のシリーズがあることを知っている人は、あまり多くはないみたい。

「オズの虹の国」はその第2作目。
作者のボームが、子どもたちの「お話の続きを!」という声に答えて世に出した、シリーズの始まりの1冊。

奇天烈な住人ばかりが住んでいる、「オズ」の国。この本の登場人物も、
それはそれは、絶対に期待を裏切らない。

中でも私が一番好きなのは、いつもニカニカ笑った顔の「かぼちゃ頭のジャック」。

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だけど笑顔とは裏腹に、ジャックの心は、いつでも心配ごとでいっぱいなんだ。
僕の頭が腐ってしまう、ああ僕の命は短い・・・と、口を開けばそればかり。

今はもう、「オズ」の国にはインチキ大魔法使いの「オズ」はいない。
だれがジャックの悩みを解決してくれるのだろう?

この本を何度目かに読んだ時、
私はブリキのニックがジャックに向かって言った言葉に、ハッと目が覚めた。
「よろしいか、きょうの太陽をあすの雨でくもらせてはいけませんぞ。」

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私は難しい大人の本は読めない。
だっていつまでも、いつまでも、大人になんかならないんだもん。
「人生にとって大切なことは すべて子どもの本に書いてある」んだもん。
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by haruno-urarano | 2009-11-26 22:36 | おはなし

めんどりとこむぎ


麦畑を見ていると
よく、大好きだった笠智衆のことを思い出すのですが、

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先日はふと、むかし読んだお話を思い出しました。

たしか・・・

ヒバリのお母さんがいて、麦畑でせっせと働いていました。
ネコだかイヌだかブタだかがいて、
ヒバリに仕事を手伝ってと頼まれたのに、
ヤダヨと言って遊んでいました。

やがて小麦が収穫されると、
ヒバリはおいしいケーキを作って、子供たちに食べさせました。
そこへあのネコだかイヌだかブタだかがやって来ると、
ヒバリのお母さんは
気前よく家の中に招き入れて、
みんなで仲よくケーキを食べましたとさ。
めでたし、めでたし。

そう、多分こんなお話でした。
               
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麦畑を眺めながら、
あのお話は、実によい話だったな~と思いました。

イソップのアリさんより、私はだんぜんヒバリさんが好きです。
世の中にヒバリさんのような人がたくさんいてくれれば、
私もいつでも、おいしいケーキが食べられるのに・・・。

何ていう題のお話だったかな?
小学館の「世界の童話」を探してみました。
どの巻だったかな・・・?

だけど・・・
日本の民話でもないし、グリムでもアンデルセンでもないし、
そんごくうでもピーターパンでも、もちろんカロりーヌでもないし・・・。

となるとイソップくらいしか残らない。
けど、それはおかしい。
あのご教訓好きのイソップに、
こんないいお話があるなんて、絶対にありえない。

そう思いながら、
一応、念のため、まさかと思いつつも、開いてみると・・・


今日のお話はこちら
(やっと本題)

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             オールカラー版 世界の童話16 「イソップの絵話」
                       昭和43年 小学館


    より、「めんどりとこむぎ」


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え~~!イソップだったんだ~~!
へぇ~、イソップが働かざるものにケーキを食わすなんてね~!
いや、感激しました。イソップさんを見直しました!

でもイソップさん、
それじゃ「アリとセミ」のご教訓と矛盾しませんか?

なになに・・・
めんどりと ぶたと あひるが ひとつの家に住んでいました。

・・・登場動物は違いましたが、話の流れは記憶と同じです。

そしてそうそう、この絵。覚えていますよ、このケーキ!

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何ておいしそうで、大きなケーキ!
この本を読んでいたころ、
パウンドケーキなんて、多分名前さえ知りませんでした。
うっとりとした目で、このページを眺めていた自分の姿が想像できます。

でも、結末は・・・

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イソップは、やっぱりイソップだったのでした。見直し撤回。

思い出は、追わないのが美しい。これまたひとつのご教訓。

でも一体、私の作り話はどこから生まれたのでしょう。
ケーキのある食卓に憧れるあまり、
自分の夢の通りに話を昇華させていったのでしょうか。

こうやって、
元の物語はひとつであっても、
きっと一人一人の胸の中に、
自分だけの物語が生まれていくのでしょう。
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by haruno-urarano | 2009-06-06 23:46 | おはなし

王様の背中

今日のお話はこちら。
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             お伽噺「王様の背中」  内田百閒作/谷中安規・画
             原本:昭和9年 楽浪書院/複刻:1993年 ほるぷ出版

本日4月20日は内田百閒の忌日です。そこで私の「宝物本」のひとつをご紹介。

学生時代、大正~昭和初期の児童文学マニアでした。
その頃ほるぷから、「赤い鳥」の複刻書が出ました※
大学の図書館で見つけ、すぐに欲しくなり、書店に問い合わせると・・・
「セット売り、36万円です」
「バラ売りはいたしません」

学生のバイトの時給が500円かそこらの時代でした。
もちろんローンなんて、考えられません。
在学中は「禁帯出」の本を、ため息をつきながら眺めていました。

そして今日のこちらの複刻書。もちろんセット販売です。

実は先に好きだったのは、谷中安規の方でした。
幻想的な作品を得意としながらも、不遇のうちに戦後、餓死した画家です。
内田百閒に愛され、作品の挿絵を手掛けたりしていました。
そのひとつがこの本です。

当時はとっくに社会人、それに「赤い鳥」の1/3の値段でした。
それでも10万円を超える書籍ですよ。ちょっと勇気がいりました。
でも、「赤い鳥」のように、逃がしたくはありませんでした。
だからこれは、たとえ複刻であっても宝物。

さて、古今東西、色んなお伽噺や昔話がありますが、
実はこれがなかなかのクセモノで。
教訓やら、勧善懲悪やらと、純真なお子様に
思想教育を垂れようなんて魂胆が隠れていたりするもんです。
大人というもんは、なかなかコザカシイ生き物であります。

ところが、我儘育ちの百閒先生は、フツーの大人と違います。
このお伽噺には、な~んの教訓なんかも隠れていません。
良い子のみなさんも、安心して手に取ることができますよ。
この通り、百閒先生が「序」の中で保証ずみです。
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ではお伽噺の中から教訓を取り去るとどうなるか・・・?
それはそれは摩訶不思議、
のんびりと、かつシュールな百閒童話の出来上がり、なのです。
安規画伯の、昭和初期とは思えぬようなファンタスティックな版画つき。
当時のお子様は、一体どんな幸せな気持ちでこの本を手にしたことでしょう。
・・・もちろん、手に出来たお子様は、ほんの少数だったでしょうが。

この本には全部で9つのお話があります。
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表題作の「王様の背中」は、
背中が痒くて痒くて痒くてたまらなくなってしまった王様のお話。
魚を見れば、「もし魚の背中が痒くなったら、どうするのだらう」
と考え、背中だけでなく全身が痒くなってしまう王様。
鳥を見ても亀を見ても、みーんな背中が痒いように見えて
身体をもだえる王様・・・のお話。

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じゃ、百閒版「桃太郎」はどんなお話かって言うと。

主人公は、桃太郎の生まれた後の、桃を盗んで行った猪なのさ。
何しろお爺さんもお婆さんも、桃から生まれた桃太郎に夢中で、
桃太郎の入っていた桃のことなんて、それっきり忘れてしまったんですもんね。

じゃ、その桃はどうなったかって言うと・・・
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ま、色々あってね。
とにかくめでたし、めでたし。で終わるんですよ。

複刻ではありますが、このシリーズはもう、古本屋でしか手に入らないでしょう。
でも買った人たちは、きっと元々が私のようなマニア系。
滅多なことでは手放さないはずです。

私は今でも探しています。幸せの「赤い鳥」・・・

百閒は後日、小文の中に、次のように記しています。

・・・「王様の背中」は私の文章と谷中安規氏の版画との合作である。
初めは谷中氏に挿絵をかいて貰ふと云ふつもりであったのが、出来上がつて見ると、
谷中安規画集の趣きがある。・・・


百閒ファンのみならず、安規ファンにとっても咽から手が出るほどの一冊でしょう。
まして両者の大ファンである私には、ダイヤモンドより価値ある本です。

※「ほるぷ」の名著複刻シリーズでは、紙質から製本方法、文体まで、
全て原本の通りに複製するので、「復刻」の字ではなく「複刻」を用いました。
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by haruno-urarano | 2008-04-20 20:40 | おはなし

うぐいすひめ

今日のお話はこちら。

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 オールカラー版 世界の童話8
     「日本の民話」
   昭和42年 小学館

  より、

    「うぐいすひめ」
 蕗谷虹児・絵/西山敏夫・文








大好きな梅の季節になるたびに、このお話を楽しみます。
幼い頃から数十年、心に焼き付けた美しい絵と共に・・・。

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春のうららかなある日、川へ釣りに来た太郎は、
ポカポカの陽気につられて歩くうち、道に迷ってしまいました。

ふと
どこからか、美しい歌声が聞こえてきます。

声の方へ歩いて行くと、女の子が洗濯をしながら歌をうたっていました。
辺りは梅の花がいっぱいで、良い香りがしました。

太郎は、女の子の家で休ませてもらうことにしました。
女の子の家はとてもきれいで、家の中にまで
梅の香りが漂っていました。

女の子は太郎に留守番を頼み、町へ買物に出かけました。

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出かける前に、二人はひとつの約束をしました。

「そのたんすの引き出しの中は、絶対に開けて見ないでください。」
「わかりました。決して開けたりいたしません。」

けれど太郎は・・・・
「ちょっとぐらい、いいだろう・・・」

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一段目には一面に緑の苗代が、風にそよそよ、そよいでいました。

「次の引き出しは何だろう・・・」

そこでは小さな小さなお百姓さんが、
稲を植えるために、田を耕していました。

「次は何だろう・・・」

あまりの不思議さに、太郎は約束などすっかり忘れ、
次々と引き出しを開けて見てしまいました。

最後まで見てしまったあと、
太郎はハッと気がつきました。
「大変なことをしてしまった。見ないと約束をしたのに・・・」

女の子は帰って来ると、
両手を顔に当てて泣きました。

「秘密のたんすを見られては、もうここには居られません」

女の子はそう言うと、外へ駆け出して行きました。

太郎が女の子を追って外へ出ると・・・
女の子の姿は消え、

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「ほう ほけきょ、ほう ほけきょ」

一羽のうぐいすが、
遠くの空へ飛んで行きました。

「ほう ほけきょ、ほう ほけきょ」

太郎はハッとして目が覚めました。
釣り糸を垂れたまま、眠っていたのでした。

全てが夢でした。
はるのうららの、川のほとりで見た、一時の春の夢でした。

 ***** ***** *****

小学館から出ていたこの「世界の童話」シリーズには、
思い出のある方も多いと思います。
小学校の図書館や児童館に行くと、全巻が揃っていました。
私の家には20巻までしかなく、残りの巻が見たくて見たくて堪りませんでした。
当時の価格で一冊390円ですが、今の5000円くらいに相当するのでしょうか。
テレビも写真も「モノクロ」が普通だった頃、子どもの絵本に「オールカラー」採用とは、
何という素晴らしい企画だったのでしょう。
浜田廣介や村岡花子、蕗谷虹児、高畠華宵、松本かつぢ等等・・・錚々たる顔ぶれが
生み出した、日本の児童文学の宝・・・と、私は勝手に信じています。
日本の子どもがフランスの少女、カロりーヌに出会えたのも、このシリーズのお陰でした。

新発田市の蕗谷虹児記念館では、「うぐいすひめ」の原画にも会うことができました。


   
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by haruno-urarano | 2008-03-03 23:03 | おはなし

ひとつだけの贈りもの

今日のお話はこちら。

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            「きん色の窓とピーター」 藤城清治・影絵/香山多佳子・お話し
                      昭和59年 暮らしの手帖社

            より、「ひとつだけの贈りもの」


時々どうしても読みたくなるおはなしのひとつ。
特に疲れている時、何もかもが嫌になった時、そんな時、こんな時、読んでみる。

夫を亡くした若い母親は、生まれたばかりの息子、アウグスッスの名付け親の老人に、
「子どものために、ひとつだけ贈りものをしようと」言われた。
今夜、老人の部屋からオルゴールの音が聞こえてきたら、
子どもの耳元で、ひとつだけ願いを唱えなさい、そうすればそれは叶えられると。

たったひとつだけ・・・
大金持ちになること? 世界一美しくなること? だれよりも利口になること?
・・・母親はあれこれ考え疲れ、うとうと居眠りしてしまった。

オルゴールの優しい音に、はっとして目を覚ました。
うろたえているうちに、音は徐々に消え始めてゆく・・・

「坊や、みんながお前を愛さずにはいられないように。
だれからも愛される子になるように・・・」

母親は祈るような思いでささやいた。

・・・・願いは叶い、
利口で美しいアウグスッスは、だれからも愛される少年となった。

だが・・・

アウグスッスは愛されるだけで、愛することを知らない、傲慢な人間へと育っていった。

愛されても愛されても、楽しささも喜びも感じることのできないアウグスッスの心は、
やがて虚しさでいっぱいになった。何のために生きるのか、わからないのだ。

そんなアウグスッスの選んだ道は、毒薬を飲むことだった・・・・。

ぶどう酒の中に毒を入れ、さあ飲もうとしたときだ。

名付け親の老人が、アウグスッスの前に現れた。

母親の願いはアウグスッスのためにしたものだったが、それは母の願いであった。
母の願いは叶ったが、アウグスッスのためにはならなかった。

「もう一度、自分で願うとしたら、何を望むかい?
もう一度だけ、その願いを叶えてあげよう」老人はそう言った。

「ああ、ぼくが人を愛することができるようにしてください!」
アウグスッスは泣き叫んだ

・・・その日から、アウグスッスの全てが変わった。

花は美しく、小鳥は愛らしく、子どもも年よりも、何もかもが愛おしい。
だれにでも親切にせずにはいられない。
どんなことにも驚きや喜びを感じる。
心があたたかく燃えているのが、自分で感じられた。

けれど、変わったのはアウグスッスだけではなかった。

もうだれひとりとして、彼を愛する者はいなくなった。
アウグスッスはだれからも相手にされず、乞食のように変わり果てた。

結末は・・・・

この絵本、
または原作であるヘッセの短編童話集『メルヒェン 』の中の「アウグスツス」をどうぞ。

「愛される」と「愛する」。
ふたつのうちのひとつしか叶わないとしたら・・・
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by haruno-urarano | 2008-02-07 23:20 | おはなし