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語前語後

今日の本はこちら


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                  「語前語後}  安野光雅  2008年  朝日新聞出版




今はもう絶版となっている安野さんのとある文庫本の解説で、「あんみつ会」なる結社のあることを知った。
20年以上昔のことなので、今もあるのかどうかは知らないけれど、秘かにずっと入会したいと思っていた。
安野さんの記事なら何でも切りぬく人。装丁本なら中身はどうでも、カバーが欲しいために本を買う人。
毎日毎日サンタ・アンノさんと言って「かいわれサンド」を食べる人・・・
こと安野さんに関しては冷静に批評することができない、そんな素敵な御仁方のお集まりだそうだ。


私も、安野さんのものなら何でも欲しい。安野さんの描いたカバーが欲しくて買った本がいくつもある。
でも安野さんの作品はあまりにも多くて、残念ながら何でも買えるような資金はない。
買いたいなー、でも高いなー、なんて思っているうちに、そのうち絶版。ああ悔しい。


久しぶりに買った安野さんのエッセー集。
安野さんに関して私に批評精神などあるはずがない。
全てのエッセーが、まるで有り難い経典のように心に沁みる。
何を隠そう、安野さんは「かいわれのみち」という新興宗教のご教祖さまなのだ。
ありがたいお教えを、いくつか抜粋。


車の修理ができあがった。乗ってみたら、運転席がうんと後ろのほうに引いてあった。後日、その修理技師に言った嫌み・・・。
「車を返すときはな、足の長い男に運転させるな。どうしても人がいなかったら、車から降りたあと、座席を前に引いておけ。そして、あの自動車屋の男は足が短いのかな、と思わせるのが商売ってえものだよ」と言えば、「そりゃあ気がつきませんでした」と言った。爾来、その自動車屋ののっぽは肩身の狭い思いをし、店は繁盛している。




子どものころ読んだ田河水泡の「のらくろ」の漫画に、犬と猿の戦いがあって、寝ている猿軍の目に赤いセロハンを貼り、「火事だあ!」と叫ぶと、猿は大慌てで右往左往するのであった。昔、寄宿舎生活をしていたころ、Kという友達が昼寝をしていて、たまたま赤いセロハンがあったので、漫画のことを思い出し、同じことをやったら、当人、驚いたのなんの。申し訳ないことをした。
この話を絵の恩師の前で話したら大笑いになったが、「おまえな、わしが学生のころな、寝ているやつのパンツの中に味噌を入れといた。するとどうなるか。これはおもしろいぞ」と言われた。わたしにはどうしてもできない。




「週刊新潮」に「掲示板」という、尋ね人みたいな私的なことでもいいから、たくさんの人に聞いてみる、というページがある。わたしは常々「上げ底」の商品が目に余ると思っていたから、「上げ底でないものを知りたい。たとえば開新堂のクッキーは、缶の中にきっしり詰まっていて気持ちが良い。だから評判が良くて、なかなか手に入らないほどだ」と書いた。(後略)



半年ほど前、約十年続けた簡易保険が満期になって1200万円くらい戻ってきた。このお金は銀行振り込みではなく、古式に則って直接持参し、目の前で勘定して手渡しするのが規則だそうで、事実、そのとおりにされた。思わぬ出来事でうれしかったが、計算すると、掛けた総金額よりも、帰ってきたのは400万円くらい少なかった。なるほど、アラブ諸国では保険が御法度だと聞いた。いわば命を賭けた博打だからだ。



・・・博打と保険、なるほどね。でも「賭けた」額にもうなってしまった。
だが凡人と比べてはならない。なにしろあちらはご教祖様なのだから。


ところどころ、青山広子さんという方から送られてきた珍談の数々を紹介しているのも面白い。


それから先ごろ亡くなられた数学者・森毅さんと安野さんが、今から30年前の1980年に初めて対面した折の対談が掲載されている。何でも元々は少しずつ雑誌に載せて、あとで単行本にまとめるつもりであったのが、互いに憧れの人で話が弾みすぎ、それならいっそ泊り込みで話をして、一気に本にしてしまおうということになり、この初顔合わせの対談は、発表の機会を失ったままになってしまったそうだ。
そんなお宝物の対談まで入っているとは、ますます有り難い経典ではないか。
実は「かいわれのみち」の教祖様は、迷信や占いを嫌い、神を信じない。


もし、キリストが本当のキリストであれば、神さまが本当に神であるなら、私の言うこと、やることを許してくれるだろうという大前提が私にあるんです。私がやることがけしからんというのなら、お前は神さまではないと言おうと思っている。



世界で一番好きな絵本は、安野さんの「天動説の絵本」だ。
私も迷信も神も信じない。安野さんを信ずる。



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by haruno-urarano | 2010-08-22 18:19 |

美しき青きドナウ

今日の音楽はこちら



美しき青きドナウ 2種 by アンドレ・リュウ











生きてるうちに一度でいいから生で見たい演奏会2つ。

1つはウィーンフィルのニューイヤー・コンサート。ラデツキー行進曲を生で手拍子してみたい。

もう1つはアンドレ・リュウのコンサート。それも絶対、ヨーロッパの国で開催されるコンサート。

だけど国内のコンサートにでさえ、もう何年も行っていないのが現実。

いつ足を洗えるやら、この暮らし。
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by haruno-urarano | 2010-08-03 18:08 | 音楽

Plaisir d'amor

今日の音楽はこちら


Plaisir d'amor / Jean Paul Egide Martini(愛の喜び / ジャン・ポール・マルティーニ)








貴族のような気品あふれるヴァイオリニスト、アンドレ・リュウ

・・・・を見ていると、

チャールス・インガルス(マイケル・ランドン)を思い出してしまうのは、自分だけだろうか。

大草原の小さな家の父さんは農民だったけど、

父さんがヴァイオリンを弾く時の姿は、アンドレ・リュウにも負けないくらいに素敵だった。
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by haruno-urarano | 2010-08-02 23:41 | 音楽

ぞくぞく ぞぞぞ

こう暑い日が続くと、ビールと冷房ばかりじゃ、身体も財布ももちゃしない。
へえ。長谷川休伯なんて人、いたんだ。知らなかった。


今日の絵本はこちら

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                    「きゅーはくの絵本⑤化物絵巻 ぞくぞく ぞぞぞ」
                    企画・原案 九州国立博物館/推薦 水木しげる
                           2007年 フレーベル館



江戸時代初期の「化物絵巻」が絵本になった。絵巻の作者は狩野宗信。
なーんだ「きゅうはく」って、九州国立博物館だ。
九博って、ユニークな収蔵品があるんだよね。見に行きたいけど、遠い。


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小さい頃って、おばけや暗がりやボロ屋が怖かった。

小学校のどっぽんトイレの奥から何番目かの便器から手が伸びてくるって噂の個室には、
絶対に入らなかった。

冬の夕方に街灯のない暗い道で、後ろからコツコツと足音が聞こえると、ゾッとした。

もっと怖かったのは暗い路を歩いていたとき、目の前の宙に突然ボワっと火の玉が浮いたこと。
見知らぬ大人が、タバコに火をつけたんだ。

すごく恐ろしかったけど、誰にも言えなかったことがある。
近所に目玉と口の大きな女の子がいた。転校生だった。
暗くなってから何度もその子と一緒に下校したことがあった。
その大きな目玉が暗がりでギョロギョロと動き、耳まで裂けんばかりの口がパクパクと開くさまは、
まるでヤマンバのようだった。
この子は本当はおばけなんじゃないかと思った。
暗い道を一人で帰るのは怖いけど、その子と一緒に帰るのも耐えがたく怖かった。


でも人間って、化物を恐れるくせに、
なんでそんなに化物ばっかり作り出したんだろう。
本当は化物のこと、好きなんじゃないかな。
だってこの絵本(絵巻)の化物も、どこか憎めない、愛嬌のある化物ばかり。


ほら狐が頭に葉っぱを乗せて、化けてる化けてる。
でも見てごらんよ、あれあれ、シッポが出てるじゃないか。
おやおや、山伏に化けたのは誰だい。灯明の油なんてなめちゃって。
おやまあこのお婆さん、化け猫を見て笑っているよ。


絵本の題には「ぞくぞく ぞぞぞ」とあるけれど、
読んだ後は「ほんわか むふふ」の方がぴったりかな。
「ぞぞぞ」にしても「むふふ」にしても、
じっとりと不快な真夏の暑さをしばし和らげてくれるなら、
化物には滅ぶことなく跳梁跋扈しつづけてくれることを願ってやまない。
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by haruno-urarano | 2010-08-01 15:36 | 日本の絵本